本研究の研究課題は、「チーム活動を通した日本企業の戦略形成プロセス」である。本研究は、日本企業の戦略が形成されていくプロセスを、現場のチーム活動による学習とチーム・リーダーシップの視点から分析するものである。 本研究は、単位組織が環境に適応していくプロセスの分析にあたって、協働プロセスとリーダーシップのインターフェイスの視点からなされることの重要性を示唆するものである。本研究の意義として、第一に、組織の環境適応は、トップ・マネジメントの戦略的意思決定によってのみなされるものではなく、むしろ戦略実践の最終的意思決定が繰り返される現場組織において、学習と自己変容による環境適応プロセスの重要性が示唆された。第二に、本研究では、これまであまり分析のすすめられてこなかった現場組織における戦略の実践と環境適応プロセスを、理論分析・実証分析をもとに組織活動とリーダーシップのインターフェイスの視点からモデル化した。 その際、前年度までに実施された理論研究と事例分析予備的調査の結果、明らかにされた知識創造プロセスに機能する共有型リーダーシップを3つの態様から類型化した。すなわち、①まず、両者のインターフェイスは、単位組織が目標としている個々のパフォーマンスへの直接的な効果として観察できる。このような場合、リーダーシップと協働プロセスの境界は容易に識別されうる。②しかし、単位組織においてメンバーの学習が進むと、リーダーシップと協働プロセスは、これまで単位組織内に蓄積された成果に規定されながら相互に影響し合う。③さらに、リーダーシップと協働プロセスの統合が進むと、両者は高度に統合され、境界の区別がほとんどつかなくなる。
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