統合失調症の認知機能の低下は、予後や生活上の支障と強い関連があるため、治療の標的症状となっている。健常者の調査では、身体活動を高めることで認知機能を改善させることが明らかになっているが、統合失調症患者では調査されていない。運動療法による認知機能の改善効果を検証する前段階として、統合失調症患者の身体活動量と認知機能の関連性を調査した。本研究課題では、①横断的調査と②縦断的調査の2つの調査から構成した。 ①横断的調査では、入院患者16名と外来患者13名とした。属性項目と精神症状の影響を統制後であっても、認知機能と身体活動量の関連性の特徴は入院患者と外来患者で異なっていた。具体的には、入院患者では身体活動量の高さと認知機能の低さが関連しており、外来患者では身体活動量の高さと認知機能の高さが関連していた。 ②縦断的調査では、6か月後も追跡調査できた入院患者14名と外来患者11名を対象にした。入院患者も外来患者も、歩数の増加と認知機能の一部の領域の改善が関連していた。また入院患者と外来患者をまとめた群にした場合、歩数の増加および3Mets以上の生活活動強度の時間が長くなることと、認知機能の改善と関連していた。 以上の結果から、入院患者の認知機能と身体活動量の関連性と、外来患者における関連性とは異なっている可能性が示唆された。認知機能の改善を目的とする運動介入では、入院患者と外来患者で異なるアプローチを要するものと思われる。
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