本研究では、花園天皇(1297-1348)と光厳天皇(1313-64)を中心とする北朝初期の文芸を取りあげ、そこに込められた治世観を検討した。はじめに、研究の基礎作業として、北朝の文芸・学問に関する資料を収集・分析した。 次に、花園天皇の作品を注釈・読解し、治世観を分析した。主な研究成果としては、「誡太子書」の詳細な注釈を発表し、そこにこめられた治世観が花園天皇の自意識と密接に関わることを指摘した。さらに、光厳天皇の作品を注釈・読解し、治世観を分析した。主な研究成果としては、『風雅和歌集』『光厳院御集』などに収録された光厳天皇の和歌に、治者としての自己を謙遜する態度が見られることを指摘した。
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