本研究では,以下の2点を明らかにした。 第一に,データの各水準である「個人」「評価項目」「製品」のそれぞれのパラメータを視覚的に明らかにするアルゴリズムを開発することによって以下のことを明らかにした。製品と評価項目と個人が同時に表現されることにより,それぞれを近接度によって評価することが可能になり,例えば「高級な」に近い製品は高級感が高いと評価されていることや,「高級な」に近い評価者は高級感を重視していること,また各評価者は近接している製品を好ましく思っているということを明らかにした。つまり,「個人」「評価語」「製品」の近接度を同一の地図上で判断することを可能にした。また,本研究内ではこれらの判断の妥当性を測定する指標の提案・検証も同時に行った。 次に,開発したアルゴリズムを発展させることにより「個人」の合成体である「グループ」を視覚的に明らかにするアルゴリズムの開発を行うことで,個人とその価値判断と製品と嗜好を統合的に扱うことにより,個人を分類するための情報が飛躍的に増加し,より集団間の違いが表れるような個人の分類が明らかになることが分かった。つまり,データを統合的に扱うことにより,その集団内においては「価値判断の傾向」や「個人と製品との近接度の傾向」が類似していることがあらかじめ明らかである「集団」を同定することが可能である。また,分析と分類を同時に行うことは,複数の分析を組み合わせるTandem analysisの課題の解決にもつながっている。これらの研究の過程で,データからグループを同定するためにクラスタ構造を組み込む対象は,データの形式や分析法の違いにより,非常に多様性が大きく,本研究で行ったクラスタリングはその一つであることが分かった。今後は,個人をクラスタリングするにあたりデータのどの部分にクラスタ構造を組みこむべきか比較検討を行うことを計画している。
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