研究課題/領域番号 |
15H06773
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
元木 絵美 神戸女子大学, 看護学部, 講師 (70382265)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 薬物療法 / 抗リウマチ薬 / アドヒアランス |
研究実績の概要 |
薬物療法を受ける関節リウマチ患者がアドヒアランスを獲得するプロセスを明らかにした。調査は、直近2年以内に治療を開始した、あるいは治療を変更した関節リウマチ患者7名(女5名、男2名)、平均年齢52.5歳(25-77歳)にインタビューを実施した。インタビューは録音して逐語録に書き起こした。切片化した逐語録データにラベルを付け、カテゴリーに分類した後、そのカテゴリーを状況、相互行為、帰結に分類して、状況が帰結に至るまでどのような相互行為があるかを分析した。
結果:薬物療法を開始・中断した患者は、その後に副作用の体験がある、または副作用の体験がなくても効果を感覚できない体験をしていた。その際患者は、体に触れたり見たりせず治療結果を判断する医師に「理解されない」と感じたとき、「内服する薬の量を減らす」など薬物の自己調整に至るプロセスがあることが明らかになった。直近2年以内に薬物療法を開始あるいは変更した関節リウマチ患者が、疾病や治療を理解し、服薬行動を適切に調整していくようになるプロセスには、医師以外にも患者仲間や書籍などから治療の効果、中断後の身体の反応、医療費などについて尋ねる他、自己の身体に現れる服薬開始後の変化を注意深く観察するなど、「情報を収集」したり「自己の身体の状態を捉える」相互作用があることが明らかになった。 考察:van den Bemt BJらは関節リウマチ患者のアドヒアランスを阻害する因子を、1.患者と医療提供者の関係性、2.医療保険制度の種類、3.薬の用法、4.効果や副作用の即時性、5.効果を知覚しているかどうかであるとしている。本研究で明らかになった情報を収集する相互作用と自己の身体を捉える相互作用は、1~5の認知や知識を高める作用があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施したインタビューを分析した結果、薬物療法を受ける関節リウマチ患者がどのように服薬に関するアドヒアランスを獲得していくのか、そのプロセスが明らかになった。今年度はアドヒアランス獲得のプロセスに含まれている因子の関連を明らかにする量的探索的研究を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、関節リウマチ患者の抗リウマチ薬の服薬アドヒアランスに関連する因子を量的探索的研究で明らかにする。 研究対象者は、20歳以上の関節リウマチ患者約2700名を予定している。研究を実施する施設は、日本リウマチ学会が認定している全国の教育施設約560施設から9施設を研究者のネットワークを使い、選定する。各施設には、約300名の患者への質問紙配布を依頼する予定である。 今後のスケジュールとしては、7月までに、質問紙で収集するデータの項目を洗練し、研究計画書を整える。7~8月に研究者が所属している施設の研究倫理委員会へ研究実施を申請し、承認を得ておく。8~10月には9つの医療施設にコンタクトをとって研究協力を依頼、必要に応じて各施設の倫理委員会の承認を得る。質問紙調査の回収期間は、9~12月までとし、分析は2017年1~2月と考えている。 さらに、3月には研究結果を考察し、薬物療養を受けている関節リウマチ患者のアドヒアランスを促進するケアモデルを検討する。 昨年度実施した研究の公表については、2016年10月に予定されている「日本臨床リウマチ学会」で発表する予定である。さらに研究協力施設の外来へもポスターで掲示してもらう予定にしている。
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