2016年度は本研究の最終年度にあたるため、昨年度までの研究を引き続き行うとともに、「教育実践リフレクションモデル」の構築及びその試行を行った。それぞれの成果内容とその意義は以下の通りである。
(1)基礎研究の展開(文献研究、フィールドワーク) 昨年度に行ったフィールドワークの成果と課題をふまえ、教育実践をめぐる関係性の動態的記述をおこなうための方法論について研究をおこなった。本年度は研究最終年度にあたるため、とくに教師のリフレクションとその記述に焦点をあてて研究を行った。そこから明らかになったのは、「実践-リフレクション-記述」の入れ子状的関係性である。教師の教育実践とそのリフレクションは相互に「記号-意味」の関係性をつくりながら、そのズレの中で雑多なモノゴトを取り込みつつ「教育実践」という営みをつくりあげている。そしてその営みを可視化するのが「記述」であり、教育実践における「合理性」はこの記述において形成されることが明らかになった。その意義はリフレクションのあり方を再考することにある。これまで教育実践とそのリフレクションには、まず実践があり、それを反省するという行為と言語の一対一関係が想定されてきた。しかし、本研究が明らかにしたのは実践とリフレクションの相補的関係であり、そこには構造的にズレが孕まれるということである。すなわち、実践とリフレクションにはズレがあり、そのズレをめぐって教育的合理性がその都度立ち上がってくるということが示されたのである。 (2)研究成果の応用(教育実践リフレクションモデルの構築・試行) 教師が自らの実践を振り返り、その振り返りを今後の教育実践に活かすための教育実践リフレクションモデルを構築し、日本及びアメリカにおける教師のリフレクションにおいて試行した。それを踏まえたモデルの改善は今後行う予定である。
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