研究課題/領域番号 |
15H06791
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
堀口 悟郎 九州産業大学, 経済学部, 講師 (40755807)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 学問の自由 / 大学の自治 / 教授の独立 / 中央集権 / 客員教員 |
研究実績の概要 |
本研究は、国公立大学法人化や学長権限の強化などの大学改革が急速に進められ、日本憲法学の「定説」であった「教授会自治」論が揺らぎ始めている今日の状況下において、当該制度改革の濁流に歯止めをかけ、学問の「素人支配」を防ぎうる、新たな憲法理論の探求を行うものである。 本年度は、フランスにおける「学問の自由」に関する理論の特徴を明らかにすべく、代表的な学説の検討を行った。具体的には、モーリス・オーリウ、ジョルジュ・ヴデル、オリヴィエ・ボーなどの学説を検討した。その結果、フランスにおいては大学教員人事等の「中央集権」が「学問の自由」を確保するうえで不可欠の条件と考えられていること、そこでいう「中央集権」は、国家的中央集権(高等教育担当大臣による独裁)でも大学内部の中央集権(学長による独裁)でもなく、大学教員集団全体における中央集権(専門職能自治)であるということを、明らかにすることができた。この研究成果は、「学問の自由と『中央集権』」憲法理論研究会編『憲法理論叢書23 対話と憲法理論』(敬文堂、2015年)61-74頁に反映させた。 また、最近の学説(オリヴィエ・ボーなど)を検討する過程で、客員教員の法的地位という、申請時には把握していなかった問題も検討することができた。フランスでは、学術的業績の乏しい者が教授団の厳格な審査を経ずに客員教員として採用される例が少なくなく、そのような事態は、教員人事等を学問の専門家が担うことを要求する「教授の独立」原則を、内部から侵食するおそれがある。この問題については、さらに研究を進め、その成果を次年度に論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランスでテロが発生したことなどから、予定していたフランスでの文献収集やインタビュー等を行うことはできなかったが、書店などを通じて邦語・仏語文献を多数収集することができた。そして、それらの文献を読み進めることで、フランスの代表的な学説に共通する特徴を明らかにすることができた。そのため、初年度の研究としては、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の研究で得られた知見・問題意識を基に、①コンセイユ・デタ判例の分析、②「教授の独立」と「司法の独立」の対比を行う予定である。ただし、今年度収集した文献には未読了のものも少なくないことから、まずはそれらの文献を読み進める必要があり、それに多くの時間をとられる可能性もある。その場合には、より短期間で研究を遂行しやすい①に研究対象を絞ることで対応する予定である。
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