研究課題
本研究では、臨床サンプル、およびstreptozotocin誘発性の膵ランゲルハンス島破壊型I型糖尿病マウスとKK/Ta-Jclマウスを高カロリー餌で飼育したII型糖尿病マウスについて、糖尿病腎糸球体毛細血管内皮細胞がtoll-like receptor (TLR)2とTLR4を発現することを報告した。TLRは主に貪食細胞が発現する自然免疫受容体で、一般組織血管では通常は発現しない。ところが、糸球体は病原因子や免疫複合体が沈着し易く、糖尿病環境で発生した免疫原性のある終末糖化産物が糸球体血管に沈着し慢性的に刺激することで内皮細胞にTLRの発現をもたらすと考えられた。TLR2はグラム陽性菌成分を、TLR4はグラム陰性菌成分lipopolysaccharide (LPS)を認識してサイトカイン産生を誘導する。本研究では、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis由来LPSを定期的に微量投与した糖尿病マウスが、同様に投与した健常マウスの全生存期間内に、全マウスが腎症で生活活性がhumane endpointに達した。腎症合併糖尿病マウスは、糸球体における炎症性サイトカインIL-1β,IL-6とTNF-αの産生およびメサンギウム細胞にコラーゲン産生を促すTGF-βの産生、またメサンギウムにおける大量のtype1コラーゲンの蓄積、強い蛋白尿、血清検査でのクレアチニンと尿素窒素異常が観察された。これらは同様のLPS投与を行った健常マウスでは見られなかった。重度の歯周疾患ではブラッシングで容易に菌血症が起こるため、血中に入った口腔微生物が腎に辿り着き、終末糖化産物蓄積など長期的酸化ストレス環境下でTLRの発現が起こった糸球体毛細血管においてTLRと結合して糖尿病性腎症が惹起されるかもしれない。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Diabetology & Metabolic Syndrome
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