研究課題/領域番号 |
15H06804
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
孫 略 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 産業医学基礎研究医員 (40757704)
|
研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 脳腫瘍 / がん幹細胞 / ミトコンドリア / 放射線 |
研究実績の概要 |
放射線が短時間に直接的、またはラジカル等を介して間接的に、生命にとって致死的なDNA二重鎖切断を引き起こすことは良く知られている。一方でこれとは別に、放射線照射数時間後から起こるミトコンドリアからの活性酸素種(ROS)の産生や細胞内抗酸化物質の誘導が細胞の生存率に関与する可能性が指摘されている。がん幹細胞においても低いROS産生や抗酸化能の亢進が報告されているが、放射線照射後に細胞内でROS産生量や抗酸化能がどのように変化し、どのような生物学的意義があるかはあまり分かっていない。本研究では放射線照射後の脳腫瘍幹細胞にどのようなredox statusの変化が起きるか明らかにし、放射線抵抗性への寄与を解析する。本年度は本研究に利用可能な放射線抵抗性脳腫瘍幹細胞モデルの作成を行った。放射線抵抗性を持つ、実験に利用可能な細胞数まで安定的に増殖させることができる脳腫瘍幹細胞モデルをA172細胞およびC6細胞から樹立した。また、細胞のレドックスバランスと放射線抵抗性の関係を明らかにするため、薬剤の投与により細胞のレドックスバランスを変化させた際の放射線応答を解析した。また、細胞の抗酸化活性の長時間解析を可能とするため、ESR装置を改造した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 以前に樹立したものを含めると、4種類の放射線抵抗性脳腫瘍幹細胞様細胞株とそのコントロール株を樹立しており、本研究に利用できる。 2) 細胞のレドックスバランスと放射線抵抗性の関係を明らかにできたため、論文投稿準備中である。 3) ESR装置改造により、再現性よく、細胞の抗酸化活性を評価できるようになった。
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度はこれまでに樹立した細胞の放射線照射後のレドックスバランスをESR装置を用いて解析する。さらに、放射線照射後のレドックスバランスの変化を分子レベルで明らかにすることを目標とする。
|