本研究の目的は、日英両国の教育政策形成におけるエビデンスの活用に着目し、その比較分析を行うことによって、わが国の教育政策形成におけるエビデンス活用の意義と問題点について示唆を得ることである。なお、本研究においては、イギリスにおけるイングランド、ウェールズ、スコットランド及び北アイルランドの4地域のうち、イングランドの教育を取り上げることでイギリスの教育について論じていく。 なお、本研究の目的であるエビデンス活用に関しては、当初、わが国の学習指導要領改訂に資する事業として実施されている研究開発学校事業と、イギリスのナショナル・カリキュラム改訂に資する事業として実施されているパイロットスクール事業を比較分析の対象としていたが、比較分析を行うための前提条件の調整を行った結果、以下の事業に調査対象を修正し分析を行った。まず、わが国においては電子黒板の導入によって実施されたモデル事業「ICTを活用した指導の効果の調査」、次に、イギリスにおいては3Dプリンター導入によるモデル事業を対象として調査・比較分析を行った。いずれも、学校に新しい電子機器を導入するために学校において実験的な実施を行っている点で共通している。また、それぞれの事業成果は「教育の情報化に関する手引き」の作成(文部科学省)と「ナショナル・カリキュラム」の改訂(Department for Education)の根拠として提示されており、エビデンスとして活用された事業である。 本研究における成果は、2016年10月第51回日本教育行政学会大会(於:大阪大学)で報告し、両国においてエビデンスとしてのデータの収集目的や活用方法に差異があることを明らかにした。ただし、本研究では資料収集の限界により、同一の電子機器を導入したモデル事業の分析を行うことができなかった。これに関しては今後の研究課題としたい。
|