研究実績の概要 |
本研究課題では、社会性昆虫アリである沖縄産トゲオオハリアリ(Diacamma sp.)を対象に、各個体の胸部にバーコードタグを接着剤で貼り付け、画像解析するソフトウェアを用いることにより、コロニー(巣)内の全個体の位置・向き情報を1秒1コマの高い時間解像度で長期間(数日間-)取得する実験システムを室内において構築し、データ解析することを目標とする。これまで、動物の集団行動の研究において、このような時間的・空間的に解像度の高い大規模データを取得し、解析を行った研究は Mersch et al. (2013, Science) だけである。また、Mersch et al. (2013) では、観察データを取得し解析を行ったのみであり、操作実験を行っていなかった。一方、本研究課題では、コロニー内における仕事量としての卵・幼虫・蛹の量を操作することや、餌探索エリアにおける餌の導入、実験環境の明暗条件の変化など、操作実験も行う予定であるため、社会性昆虫のシステムの理解にとって意義がある。今後は、個体間相互作用として特徴的な順位行動に着目し、データからどの個体間でいつ起きたかを抽出することを試みる。さらに位置と向きの大規模データから、個体間の接触ネットワークの解析や、非線形時系列解析を用いた各個体の活動時系列データから個体間相互作用の因果性検出、各個体のactivity, inactivityの時間のベキ分布を解析する。それによって、社会性昆虫の統合されたシステムを、大規模データを解析することで理解する。
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