研究課題
本研究では、核融合プラズマを加熱する主要な手法である電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)の加熱特性を実験的に評価することを目的としている。具体的には、(1)入射EC波の電力及び偏波計測、(2)プラズマに吸収される加熱分布評価、(3)プラズマ中の電子熱速度の非等方性及び高速電子の計測の3点について研究開発を進めている。(1)について、入射EC波電力及び偏波計測モニターの検出部に用いられているADC(Analog digital converter)付きFPGA(Field Programmable Gate Array)のプログラムを改良することにより、約20ミリ秒サンプリングであった計測の時間分解能を約100マイクロ秒に向上させることに成功した。また、韓国のトカマク型磁場閉じ込め核融合装置(KSTER)においても偏波計測器が開発されている最中であり、核融合科学研究所(NIFS)で開発を進めている本モニターの検出部FPGA付ADCをKSTERでも適用できるようにしている。(2)の加熱吸収分布評価について、評価に用いる電子温度データを計測する電子サイクロトロン放射(ECE)計測の加熱位置付近での計測領域を広げるために、ノッチフィルタの開発・評価を進めた。加熱位置付近での高時間分解能な電子温度計測は加熱分布評価に極めて重要であり、さらには、加熱位置での輸送現象の明確化などの物理機構解明にも貢献する。(3)について、プラズマ中の電子熱速度の非等方性及び高速電子を計測する機器である偏光分光計測器は、1/2波長板の回転機構及びシステム以外についてはおよそ一通り完成している。1/2波長板の回転機構及びシステムを作製するための機器及び手段は揃い、開発を進めている。
3: やや遅れている
昨年度予定されていたLHD(大型ヘリカル装置)実験が中止された。そのため、昨年度は予定されていた計画に比べて、各計測機器の時間分解能や計測領域、計測精度、汎用性の向上など性能改善を目的とする開発の割合を大きくした。
平成27年度に行った装置及び解析法の開発を引き続き進め、前述【研究実績の概要】で述べた加熱特性を表すパラメータを計測可能にする。大電力ミリ波発振器から放出された電力及び偏波が既知なEC波を開発したモニターで計測し、モニター感度及び位相の絶対校正を行うことで定量的に電力及び偏波を実時間計測可能にする。絶対校正後はLHDへ実装し実験中は常時、入射EC波の電力及び偏波を計測する。また、検出器として用いているFPGA付ADCに回路用言語を用いて偏波計算の解析プログラムを書き込み、計測の時間分解能を向上させる。吸収電力評価法の開発を進める。次サイクルLHD実験で、加熱吸収電力評価に適した実験を行い、新たな吸収電力分布評価法を適用する。実験では開発した入射電力及び偏波実時間計測モニター及び偏光分光計測器のデータも取得する。ECRHを高速にオンオフ変調(100Hz)入射し、ECRH開始時間を基準として電子温度データに条件付き平均化法を適用することで、より高精度に電子温度分布の時間変化を求める。得られた吸収電力分布とレイトレース計算を比較することで相互に妥当性の検証及び加熱物理的な考察を行う。平行して偏光分光器の1/2波長板の回転機構及びその回転角の検知・制御システムの開発を進める。1/2波長板を10Hz程度の速さで回転させ、10Hz毎に垂直2成分の偏光を検出することで偏光度を計算する。偏光分光計測器をLHDに実装し偏光度を測定し、電子の速度成分非等方性について考察する。以上についてまとめ、学会発表及び論文投稿する。
すべて 2015
すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)