生殖細胞は、精子と卵の元となる細胞であるが、ただ配偶子を作るだけでなく、生殖腺の性分化、特にメス化に重要であることがメダカを用いた研究で明らかとなった。しかし、生殖細胞からどのような因子が分泌され、生殖腺をメス化するのか、そのメカニズムは全く分かっていない。本研究の目的は生殖細胞の分化段階に着目し、生殖細胞が特定の分化段階で止まる変異体を作出することで、生殖腺をメス化するために重要な生殖細胞の分化段階を特定することである。27年度では、以下の変異体を作出することで生殖細胞をある特定の分化段階で停止させ、その変異体のXX個体の生殖腺が卵巣へ分化するのか調べた。 figla変異体:figla遺伝子は減数分裂へ進行した卵母細胞で発現することが知られている。figla変異体の生殖細胞は減数分裂のzygotene後期で停止し、濾胞を形成しなかった。ところがfigla変異体のXX個体は、第二次性徴がメスで、さらに生殖腺も卵巣であった。 moto変異体:moto変異体の生殖細胞は幹細胞型 (TypeI) からシスト型 (TypeII) への移行が抑制された。興味深いことにTypeIのみの生殖細胞を持つXX変異体は、第二次性徴がメスとなり、生殖腺も卵巣であることが明らかとなった。 dazl変異体:dazl変異体の生殖細胞は形態的な観察から始原生殖細胞様であることが明らかとなった。今後は同変異体を成魚まで育て、第二次性徴、生殖腺を調べる予定である。 以上のことから少なくともType I生殖細胞が存在すればXX個体において卵巣は形成されるという新たな知見が得られた。これは生殖細胞が体細胞をメス化させる因子の同定に貢献できると成果と考えられる。
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