当該年度において、より高精度に地表変動を推定するためのPSInSARアルゴリズムの開発と、複数のメカニズムが融合して発生している地表変動現象(複合的地表変動現象)の解明を行った。 アルゴリズム開発に関する研究では、通常単偏波を用いて解析するPSInSAR解析について、最尤法を元に複数の偏波で取得されたデータを融合的に解析することで地表変動の精度および地表変動を推定可能なピクセル数を向上させる手法を開発した。この手法により、通常の単偏波を用いた解析と比較して、地表変動を推定可能なピクセル数が1.8-3.8倍増加し、地表変動域をより明瞭を捉えることができることを示した。また、時系列地表変動を推定する際に、ピクセルごとのノイズ特性に応じてデータペアを決定する手法を開発し、地表変動の空間分布がより明瞭に捉えられることを示した。この手法は特に従来は高精度に地表変動を推定することが難しかった植生の繁茂する地域に適用可能な手法である。 複合的地表変動現象の検出に関する研究では、2014年から2016年の間における白山南西斜面の地すべり斜面の地表変動量を検出した。この地表変動の面的な分布から、従来は1つと考えられていた地すべりブロックが複数の地すべりブロックで構成されていることを推定した。また、2016年熊本地震に伴い、地震断層の動きに伴う広域の地表変動に加えて、水前寺湖周辺の局所的な沈下および、阿蘇山南西部で大規模な岩体(数km程度の幅)の約1mもの水平移動を捉え、メカニズムの考察を行った。このような地震に誘発される地表変動の検出および原因の解明は、熊本地域だけでなく他地域で今後地震が発生した際の地盤の安定性の検討に役立つと考えられる。
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