本研究は、アイヌ音楽の研究基盤となる資料の情報を整理し、地域差や時代差を考慮しつつ伝承曲目の概要及び現況を明らかにすることを目的として、公刊されたアイヌ音楽の音声・映像資料の情報収集・整理、音声資料の音楽分析、道内各地の伝承団体の伝承曲目の調査と採録を実施した。その結果、当初予測以上に録音資料の情報を得られた一方、比較の基準とした『アイヌ伝統音楽』(1965)収録曲目が、必ずしも現在の伝承団体による演目と共通していないことが確かめられた。また、『アイヌの音楽』(1967)の音声資料を対象に拍節構造の分析を行い、「音頭一同」の歌唱形式が1節の拍節構造に影響を与える可能性について指摘した。
|