本研究は、チェレンコフ光を利用したイメージング手法を応用し、植物体内の放射性セシウム動態研究に有効な植物RIイメージング技術の開発を目指すものである。本年度は、植物研究に特化したチェレンコフイメージングシステムの構築を行った。また開発したシステムを用いて、Cs-137を吸収させた生きたダイズに対し、イメージング実験を行った。 生きた植物に対しチェレンコフイメージング実験を行うため、植物育成庫内に暗箱を設置した。これにより、温度・湿度の調整を可能としつつ、チェレンコフ光の検出に必要な暗環境を実現した。この暗箱内に高感度CCDカメラと撮像対象となる植物を設置することで撮像を行う。また、暗箱内に高照度LEDを設置し、植物の育成に必要な光量を適時確保することを可能し、撮像時はLEDをOFF、それ以外はLEDをONにする測定プロトコルと組み合わせることで、植物自身の発光等と放射性同位元素(RI)によるチェレンコフ光を弁別し、非接触で生きた植物を対象としたRIイメージング実験を可能とした。 生きた植物に対するチェレンコフイメージングの実証実験では、播種後11日目のダイズを供試植物とした。このダイズの水耕液にCs-137を10 MBq投与することで、放射性セシウムを根から吸収させ、その動態を4日間撮像した。 撮像の結果、ダイズ体内における高精細なセシウム分布画像を取得できた。また一連の画像データから、Cs-137が節へと蓄積される様子が観察できた。以上の結果から、植物チェレンコフイメージング技術は、植物体内における放射性セシウム動態の撮像に有効な手法であることが示唆された。
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