研究実績の概要 |
本課題では、イネでのみ確立されているジーンターゲッティング(GT)を様々な植物種に適用可能な汎用的な実験系へと発展させるため、以下の2つのアプローチにより双子葉のモデル植物であるタバコにおいてGTによる内在性遺伝子の改変に取り組んできた。 ・ネガティブ選抜のタイミング調節が可能な条件的ネガティブ選抜マーカーの利用 新規条件的ネガティブ選抜マーカーとして、温度感受性ジフテリアトキシン、5-フルオロシトシン高特異的シトシンデアミナーゼ(CodA, V125A/F316C/D317G)、キメラリプレッサーによるポジティブ選抜マーカーの抑制系を考案し、タバコ葉片を用いた形質転換系によりネガティブ選抜効果を評価した。また、従来より双子葉および単子葉でネガティブ選抜マーカーとして利用されている改良型シトシンデアミナーゼ(CodA, D314A)のネガティブ選抜効果を評価した。その結果、CodA(D314A)とキメラリプレッサーによるポジティブ選抜マーカーの発現抑制系が形質転換カルスおよび再分化個体の再生頻度を顕著に抑制した。 ・GTに成功した細胞の増殖促進 イネカルスにおいて、細胞増殖活性を示すことが知られている分泌型ペプチドであるファイトスルフォカイン (PSK) をカルス誘導培地に添加し、細胞増殖活性を検証した。しかし、様々な生育温度においても顕著な細胞増殖活性を示さなかった。さらに、イネ内在性PSKであるOsPSK1αをイネカルスに過剰発現させて細胞増殖活性を評価したところ、明らかな細胞増殖の促進は見られなかった。このアプローチは、GT細胞の選抜効率促進には寄与しないと結論付けた。 現在、新規ネガティブ選抜マーカーとして開発したポジティブ選抜マーカーの発現を抑制するキメラリプレッサーを利用し、ジーンターゲッティングによってタバコ内在性遺伝子をピンポイントに改変することを試みている。
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