研究計画で述べた行動実験については、目的となるPosner課題の確立のために、全自動行動訓練システムの拡張に努め、一日に28匹のマウスを訓練することが可能になった。また予備的に方位弁別課題の訓練を行ったところ、マウスはこの課題をよく学習し、さらに数理的解析によりこの学習には課題そのものの仕組みを学習するproceduralな学習と、方位弁別能それ自体の学習であるperceptualな学習が存在していることが判明した。現在これらの解析を通じて培った統計的手法をPosner課題に応用すべく、実験の準備を進めている。 また、2光子顕微鏡によるイメージングとオプトジェネティクスによる神経活動操作を同時に行うために、digital micromirror device(DMD)を用いた局所的光刺激の系を立ち上げた。当初検討していた水銀ランプを光源とした刺激では光強度が足りないことが判明したため、顕微鏡の1光子レーザーを改造し、光刺激用光源として用いることで十分な強度の光刺激を実現することに成功した。さらにこの系を用いてアデノ関連ウイルスを注射した遺伝子組み換えマウスで、in vivoの状態で選択的に神経活動を誘起することに成功している。 今後はこれらの活動記録、光刺激を、行動課題と組み合わせることで生理的に意味のある神経活動を明らかにしていく。すでに予備的な実験により、全自動訓練システムで覚えた学習課題を、顕微鏡下でも同様に行えることが判明し、またそのための設備も、ハードウェア、ソフトウェアの両面で整いつつある。
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