研究計画で述べた行動実験に関して、さらに効率よく多数のマウスを訓練するため、全自動行動訓練システムの拡張に努め、1日に48匹のマウスを実験者が直接関わることなく訓練することが可能になった。複数の行動課題の訓練を通じて蓄積されたノウハウを活かし、現在予定していたPosner課題の訓練を行っている。 一方で神経活動計測については2光子カルシウムイメージングシステムの確立につとめ、各種データ取得、解析手法の準備が整っている。digital-micromirror deviceを用いた光刺激を組み合わせ、行動実験中の神経活動操作が可能である。また、自動訓練システムから顕微鏡下に移した際に同様の課題を遂行できるように、マウスに最小限の差異しか感じさせないような固定システムの開発にも成功し、実際に迅速にマウスが対応できることも確認済みである。 現在、既に得られた知見をまとめた論文を投稿準備中である。 さらに、もともと予備的な実験として確立された方位弁別課題の学習データに注目し、マウスが方位を抽象的概念として認識し、課題を遂行していることを心理物理学的な解析で明らかにした。また、これらの行動中に広範囲の脳部位を同時に見れるwidefield顕微鏡を用い、脳活動のダイナミクスと意思決定プロセスとの関連を解析中である。これらの解析により、詳しい機能のいまだにわかっていないげっ歯類高次視覚野の機能分布を明らかにするとともに、意思決定に関わる領域とその機能を明らかにすることが期待される。
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