申請者は、エクソソームの物性と動態の相関性を理解することで、drug delivery system(DDS)として利用可能なエクソソームの「カタログ」を作成することを目指し、①物性及び動態の情報収集と、②エクソソームへの生理活性物質の内封手法の検討を行った。平成27年度までに、①ではエクソソームの物性(粒子径、タンパク質発現、脂質組成)を評価する評価系を選定・確立し、②ではエクソソームの物性変化を伴わない効率的な分子封入法としてリポソームとの膜融合戦略を見出した。 ①で行うエクソソームの動態評価の手段として光イメージング法が報告されていたが、光透過性や時空間的分解能の観点から高精度なデータを得られているとは言えなかった。そのため平成28年度では、より定量的な評価を可能とするために、positron emission tomography(PET)イメージングに必要なポジトロン放出核種のエクソソームへの標識方法の確立を目指した。様々な標識戦略を比較したところ、ポジトロン放出核種64Cuを配位させたキレーターをエクソソーム膜表面へ共有結合させる方法が効率的かつ安定的であることが明らかとなった。実際に、マクロファージ細胞株由来エクソソームに64Cuを標識しマウスへの尾静脈投与によるPETイメージングを行ったところ、他のイメージング法に基づき動態評価を行っている既報の結果と同様の傾向が認められた。 現在、この手法を用いて、がんに標的性を有すると予想される細胞(がん細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、マクロファージ)由来のエクソソームにそれぞれ64Cuを標識し、体内動態の比較を行っている最中である。これらのエクソソームの動態をそれぞれの物性と照らし合わせ、がんへの送達に適したエクソソーム及び重要な物性因子を特定することで、エクソソームカタログ作成の有用性が示されると考えている。
|