本研究の目的は、大規模な地震災害により被災した地域住民の健康を、自助と共助の観点からプロモートする“コミュニティ・エンパワメント”のモデル構築である。先行研究からコミュニティ・エンパワメントを地域住民の相互作用に基づくプロセスとしてとらえた。このプロセスに関与する3つの要素を設定した。その要素とは、ⅰ)コミュニティ・エンパワメントを支援する看護者の介入要素、ⅱ)コミュニティの環境要素、ⅲ)地域住民の要素であった。 本年度は、宮城県、岩手県、福島県の被災後のコミュニティにおける健康管理、健康支援活動についてフィールドワークを行い、活動記録とあわせて質的帰納的分析を行った。 分析の結果、270コード、47サブカテゴリ、11カテゴリに整理された。そのうち、コア要素は6つのコアカテゴリとしてマッピングされた。そのコアカテゴリとは、【地域の風土・規範】【時間の共有】【情報の共有】であり、コミュニティをエンパワメントする基軸となっていた。災害サイクルの過程で、時間経過とともに拡張することが期待される要素は、【住民どうしの信頼形成】【地域への愛着】【生活の安全と安心】であった。コミュニティ・エンパワメントモデルは、住民どうしの活動が組織化されていく要素と形成過程についてプロセスモデルとして説明された。
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