研究実績の概要 |
モデルベース歩容認証法は、関節運動から映像中の人物が同一人か否かを判定する手法であり、現在科学捜査で用いられているシルエットを用いる手法(岩間 他, CVIM, 2013)とは異なるアプローチである。本研究課題ではまず基礎的な検討としてシルエットから自動処理で得られる特徴点を用いた手法を提案し、モデルベース手法の特徴について理解を深めた(井元 他, 2017, 精密工学会誌/井元 他, 2016, ViEW)。その後、内部メカニズムの推定に基づく手法の提案及び個人識別の性能の基礎的な評価を行った。 内部メカニズムの推定に基づく手法に関して、自己回帰モデルを用いる方法と関節分布を用いる方法の2つ開発・評価した(井元 他, 2016, SBRA/D. Imoto, 2017, AAFS)。1つは、Multi-Layer Perseptronを用いた非線形数理モデル(自己回帰モデル)により関節運動をモデル化し、そのパラメータを用いて識別を行う方法である(自己回帰モデルを用いる方法)。2つ目は予め学習した関節位置の確率分布から計算した確率密度の時系列を用いて識別を行う手法である(関節分布を用いる方法)。比較した既存手法としては関節運動から相違度を算出し(Bouchrika et al., 2011, JFS)、識別を行う方法を用いた。1歩行データにつき約1~2周期が含まれる14人の独自のデータベースを用いて評価した結果、関節分布を用いる方法はパラメータ推定に用いるデータ量の不足から識別力が低いことが明らかとなった。一方で、関節分布を用いる方法は既存手法と同程度の識別力を示すことが分かり、さらに服装が異なる場合の識別力の低下が既存手法よりも抑えられることが明らかとなった。本研究課題では小規模のデータでしか評価できなかったが、今後大規模のデータベースでの検証が必要である。
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