研究課題
我々は以前、制御性T細胞(Regulatory T cell:Treg)が自己反応性CD8+ T細胞を安定した不応答(アネルギー)状態に陥らせることにより長期の免疫寛容を成立させていること、またこれらの不応答T細胞が特徴的なフェノタイプ(CCR7+CTLA-4+)を持つことを報告した。近年、Tregによる抗腫瘍免疫応答抑制によりがん免疫療法の効果が十分に発揮されていないことが指摘されている。がん抗原の多くが自己抗原由来であることを鑑みると、Tregによる抗腫瘍免疫応答抑制と不応答誘導の関連が示唆される。本研究では、悪性黒色腫検体(腫瘍局所浸潤リンパ球:TIL)を用いて、腫瘍微小環境でのTregによるエフェクターT細胞(特にCD8+ T細胞)への不応答状態の誘導とそのメカニズムを明らかにするとともに、CD8+ T細胞/Treg比や不応答状態のエフェクターT細胞の存在と予後と相関を検討し、新たな治療標的およびバイオマーカー同定に向けた基盤検討を行うことを目的としている。 また、我々はすでにTreg存在下で誘導された自己(腫瘍)抗原特異的CD8+T細胞は細胞分裂を1度で停止することを健康人末梢血単核球(PBMC)を用いて見出している。中でも特にTregにより抑制された自己(腫瘍)抗原特異的CD8+T細胞の網羅的な遺伝子発現解析から、Treg存在下で誘導された自己(腫瘍)抗原特異的CD8+T細胞は、ナイーブT細胞マーカーを維持しつつ、免疫抑制因子を共発現する特徴的なフェノタイプを示すことを明らかにしている。本研究では、悪性黒色腫検体局所検体・末梢血を用いてフローサイトメーターで解析した。免疫チェックポイント阻害剤投与前後の検体は、投与後の組織回収が非常に困難であるため末梢血を用いて解析を行った。予後との相関に関しては現在もモニタリング中であるため今後引き続き経過を観察する。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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医学の歩み がん標的分子と治療開発ー現状と将来
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Nature Medicine
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