研究課題
卵巣がんは自覚症状に乏しく、また早期に検出できるスクリーニング法がない為に、約半数以上はⅢ期、Ⅳ期の進行がんとして発見される。現在の標準治療では、多くが再発するため依然として予後不良の疾患である。いくつかの治療戦略が試みられているが、有効な治療法はなく、より効果的な治療法の開発が切望されている。近年、抗原ペプチドにリポソームを結合したワクチンが、ウイルス感染防御や抗腫瘍効果を発揮することが報告された。このことから、ペプチド結合リポソームはIFA混合ペプチドワクチンに代わる新たながんペプチドワクチン法の選択肢になると考えらえる。我々はグリピカン-3(GPC3)ペプチド結合リポソームを作製し、それをマウスに投与することによりGPC3ペプチド特異的細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能および抗腫瘍効果の検討を行った。GPC3ペプチド結合リポソームとToll様受容体9(TLR9)のアゴニストを共にマウスへ投与して、ペプチド特異的CTLが誘導されるかを評価した。その結果、HLA-A2拘束性エピトープおよびH2-Kb/Db拘束性エピトープどちらを用いた場合においてもペプチド特異的CTLの誘導が観察された。また、IFA混合GPC3ペプチドワクチンを投与した場合に比較して、GPC3ペプチド結合リポソームワクチンは、CTLの誘導効率が高いことが明らかになった。また、この誘導効果の増強にはペプチドとリポソームの結合が重要であった。さらにHLA-A2トランスジェニックマウスを用いた解析により、GPC3結合リポソームワクチンは、ペプチドを結合していないリポソームに比べ、腫瘍の成長が著しく抑制されることを明らかにした。これらの観察はGPC3ペプチド結合リポソームワクチンがIFA混合ペプチドワクチンに代わる新しいがんペプチドワクチンになる可能性を示唆するものである。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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