ユビキチンによるタンパク質の翻訳後修飾は、タンパク質分解のみならず、シグナル伝達や、タンパク質の輸送など広汎な生命機能を制御することが明らかとなってきた。ユビキチン修飾が多彩な機能を発揮することを可能としているのがユビキチン修飾の構造多様性である。ユビキチン修飾の構造は、「ユビキチン鎖の種類」、「長さ」、「翻訳後修飾」、「複雑さ」の4つの要素から成り立つ。しかしながら、「長さ」については重要な要素にもかかわらずSDS電気泳動の移動度で見積もる以外に解析法が存在しなかったためほとんど議論されてこなかった。申請者はユビキチン鎖結合プローブによるユビキチン鎖の保護とトリプシンによる限定分解を組み合わせることによりユビキチン鎖長を決定する手法Ub-ProT 法(Ubiquitin chain-Protectionfrom Trypsinization)を開発してきた。本研究では、申請者が開発したユビキチン鎖長決定法および質量分析計によるユビキチン鎖の高感度絶対定量法を用いて、主要なユビキチン依存的経路である増殖因子受容体のダウンレギュレーションに焦点を当て解析することで、同経路におけるユビキチンシグナルの実体とデコーティング機構を時空間的に解明することを目的とする。本年度はEGF依存的に上皮成長因子受容体EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)に付加されるユビキチン鎖の種類と長さを明らかとすることを目的として解析をおこなった。FLAGタグ融合EGFR安定発現細胞をEGF刺激後、抗FLAG抗体により免疫沈降し、Ub-ProT法によりEGFRに付加されたユビキチン鎖を解析した。この結果、EGF刺激により4-6個のK63鎖がEGFRに付加されることが明らかとなった。
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