研究課題/領域番号 |
15H06883
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
青木 吉嗣 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, その他 (80534172)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | デュシェンヌ型筋ジストロフィー / エクソン・スキップ / クラスA スカベンジャー受容体 / モルフォリノ核酸 / ペプチド付加モルフォリノ核酸 / 薬物送達 / SR-A欠損マウス / 筋収縮 |
研究実績の概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象にした、エクソン・スキップ治療の効果向上のため、マクロファージ クラスA スカベンジャー受容体 (SR-A)がモルフォリノ核酸(PMO)あるいはペプチド付加モルフォリノ核酸(P-PMO)の細胞内取り込みに果たす役割を明らかにすることが本研究の目的である。これにより、現在治験が進行中のDMDを対象にしたエクソン53スキップの治療効果を向上できる可能性がある。更に、薬物送達能を画期的に改善させたP-PMOを、DMDの治療応用へと展開するための研究基盤を確立できると考えられる。
平成27年度は、主任研究者のこれまでの研究成果を発展させる形で(Hum Mol Genet.2013、Nano Letters. 2015)、マウスH2K-mdx52筋管細胞の自発収縮下で、SR-Aを介したPMOあるいはP-PMOの細胞内取り込みが影響受けるかどうかを検討した。結果は、自発的筋収縮下では、SR-Aの細胞内局在が、細胞質から細胞膜のカベオラに変化することが判明した。次に、ミオシンⅡの特異的阻害剤であるN-benzyl-p-toluene sulphonamideを用いて筋管細胞の自発収縮を阻害すると、阻害剤を添加しなかった時と比べて、PMOあるいはP-PMOトランスフェクション後のエクソン・スキップ誘導効率が有意に低下した。本結果は、筋管の自発収縮によりSR-Aの細胞内局在は変化する事、PMOおよびP-PMOの細胞内取り込みは促進することを示唆する。 併行して、SR-A欠損マウスを米国のジャクソンラボから無事に導入し、SR-A/ジストロフィン・ダブル欠損マウスを作成して表現型を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予備実験の結果を受けて、マウスH2K-mdx52筋管細胞の自発収縮により着目して、SR-Aを介したPMOあるいはP-PMOの細胞内取り込みの詳細な検討を行っている。この結果、世界で初めて筋管収縮がアンチセンス核酸の取り込みに果たす役割について、分子レベルで解明できる可能性が出てきた。これは当初の予想を超える大きな科学的成果をもたらす可能性が高いと考えられる。 SR-A/ジストロフィン・ダブル欠損マウスの表現型解析も順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
マウスH2K-mdx52筋管細胞の自発収縮下では、SR-Aをはじめとする分子の細胞内局在が細胞質から細胞膜に変化し、PMOやP-PMOの細胞内取り込みに関与するとの仮説を新たに立てた。これを実証するため、自発収縮あり/なしの筋管細胞から細胞膜分画を抽出し、網羅的解析により、プロテオームの変化を解析する方針である。さらに、細胞レベルで実証した現象が生体であてはまるかどうかについて、SR-A/ジストロフィン・ダブル欠損マウスを対象に、ex vivoの筋収縮システムを用いて検証する方針である。
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