祇園南海の作品については、昨年度に引き続き、合計16件(掛軸12件、画巻1件、メクリ3件)の調査をおこない、それぞれについて、全図・部分の詳細な写真を撮影し、南海作品のデータの整理をおこなった。そのうえで、南海の絵画表現における特徴を明らかにするとともに、落款・印章学的な比較に基づいて、南海の作品に関する真贋の整理をおこない、特に、南海の山水表現における中国絵画からの影響とみられる要素を抽出した。さらに、後の時代の文人画家の表現への影響についても考察を及ぼした。
彭城百川の作品についても、昨年度に引き続き、合計27件(掛軸12件、屏風5件、襖1件41面、小襖1件2面、屏風内貼交5件、書簡1件、短冊2件)の調査をおこない、それぞれについて、全図・部分の詳細な写真を撮影し、データの整理をおこなった。そのうえで、落款・印章学的な比較に基づいて、百川の作品に関する真贋の整理をおこない、百川の作例を、文人画風のものと、俳画風のものに大別し、特に文人画風の作例について、中国絵画からの影響とみられる要素を抽出した。また、俳画風のものに関しては、その賛者などから名古屋の俳人や文人たちとの交流に考察を及ぼした。
柳沢淇園の作品については、合計96件(掛軸64件、巻子1件、屏風1件、額1面、屏風内貼交20件、版本1件、印譜2件、書簡5件、日記1件)の調査をおこない、それぞれについて、全図・部分の詳細な写真を撮影し、データの整理をおこなった。そのうえで、落款・印章学的な比較に基づいて、淇園の作品に関する真贋の整理をおこない、淇園の作例を、人物画、花鳥画、墨竹を中心とする墨戯系の絵画の三種に大別し、それぞれについて、淇園の絵画表現における特徴を明らかにし、中国絵画からの影響とみられる要素を抽出した。また、淇園の書簡や日記などの内容から、大和郡山を中心とする文人たちとの交流についても考察を進めた。
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