研究課題/領域番号 |
15H06887
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佃 洸摂 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報技術研究部門, 研究員 (40760020)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 動画検索 / 印象情報 / 時刻同期コメント |
研究実績の概要 |
本年度は、視聴者の反応をクエリとして使用することで、ユーザが自分好みの動画のランキングを生成できるシステムSmartVideoRanking を提案した。たとえばユーザが「初音ミク」というクエリを入力すると、SmartVideoRanking は「ベースかっこいい」や「鳥肌がすごい」といった視聴者の反応をキーワードとしてユーザに推薦する。ユーザが「鳥肌がすごい」というキーワードを選択すると、SmartVideoRankingは「初音ミク」に関する動画の中で「鳥肌がすごい」という反応が多い動画ほど上位に表示されるランキングを生成してユーザに提示する。本研究では、クエリに対して有用な視聴者の反応を抽出するために,視聴者が動画に投稿した時刻同期コメントを利用した。提案手法では,コメントに関する特徴を用いた機械学習により、クエリに対するコメントの有用度を推定する。 50 個のクエリを用いた評価実験の結果、提案手法によって推定された有用度と評価者によって判定された有用度の相関は平均で0.7547 を達成した。また、クエリに関する動画を再生数の多い順に表示する従来のランキングと、ユーザが選択したコメントに基づいて生成されるランキングを比較したところ、上位30 件の重複の平均は2.923 件であり、コメントを検索に用いることで従来のランキング方法では発見が困難な動画を閲覧可能なランキングを生成できることを示した。最後に、SmartVideoRanking のプロトタイプを実装し、コメントに基づく動画のランキングシステムを実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は、(1)認知的尺度の自動抽出、(2)認知的尺度に基づく動画のランキング、(3)検索支援のためのWebサービスの開発、に取り組むことを掲げ、いずれも予定通りに達成された。(1) 認知的尺度の自動抽出については、コメントごとに14カテゴリから成る特徴量を求め、機械学習によって各コメントの認知的尺度としての有用性を測ることで自動抽出を実現した。また、1万件のコメントに対する有用度を人手でラベル付けすることで、推定された有用度の精度を定量的に評価し、十分に高い精度で推定できていることを示した。(2) 認知的尺度に基づく動画のランキングについては、対象コメントおよびその類似コメントの各動画への投稿数を求めることで、対象コメントとの関連が強い順に動画をランキングすることを実現した。(3) 検索支援のためのWebサービスの開発については、認知的尺度に基づく動画検索システムのプロトタイプSmartVideoRankingを作成し、翌年度のWebサービスの公開につながる成果をあげることができた。 また、当初は平成28年度に取り組む予定であった、検索クエリにとって重要な認知的尺度の推薦にも、当初の予定を前倒しして取り組んだ。認知的尺度の自動抽出において、検索クエリとの関連度も特徴量として考慮することで、クエリに応じた動的な認知的尺度をユーザに推薦することを可能とした。 以上の理由により、現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に作成した認知的尺度に基づく動画検索システムのプロトタイプSmartVideoRankingを元にしたWebサービスを、誰もが無償で利用できるかたちで公開する。公開後は、サービス利用者のプライバシーに配慮しつつ、サービス上での利用者の操作ログを収集する。ログを用いて、認知的尺度に基づく動画検索という新しい体験を提供したときに、ユーザの動画検索および閲覧行為にどのような影響を与えるかを分析する。また、これまでは事前に用意した1万件のコメントに対するラベルだけを正解データとしていたが、サービス上でユーザが好んで選択するコメントの情報を収集することで、実際のユーザのニーズにより即した正解データを日々更新しながら収集し、学習に反映させる。 発信支援に関しては、発信直後でユーザの反応が少ない動画であっても各認知的尺度で検索された際に適切な順位にランキングされるよう、各尺度について、コメントの内容と動画の特徴量の関係の強さを明らかにする。また、コメント量や内容に応じて、動画の特徴量とコメントのどちらをどの程度重視するかを動的に変更することで認知的尺度の推定精度を高める方法についても検討を行う。動画の持つ個性の明確化を目的とした、制作者に対するキーワードやサムネイルの推薦については、ユーザの検索行動の分析などから、認知的尺度ごとに、ユーザが動画に到達しやすいパターン(タグでの検索が多い、など)を明らかにする。これにより、動画への到達可能性が最も高くなる情報推薦の手法について検討する。
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