本研究の目的である「導電性酸化物単結晶を用いた粒子整列塗膜の実現」において、平成28年度の研究実施計画に記載した「La4BaCu5O13+d単結晶微粒子の形状異方性制御及び強塩基グラックス法における当該酸化物材料の結晶成長メカニズムの解明、単結晶微粒子整列膜の実現」の達成に向け、様々な検討を実施した。 平成27年度から継続して検討を行った「単結晶微粒子の形状異方性制御」に関しては、温度や原料濃度、雰囲気、昇降温レートなど結晶成長に係るあらゆるパラメータを検討した。その結果、どの様な成長条件においても、単結晶微粒子の面が複合ペロブスカイトであるLa4BaCu5O13+dのab面やac面に平行に成長することは無く、La4BaCu5O13+dの中に5つ存在する基本ペロブスカイトab面に平行に成長することが明らかとなった。そのため、当該材料系では形状異方性を有する単結晶微粒子を作成する事が困難であると判断し、立方体単結晶微粒子を用いた整列膜の作製へと研究計画を変更した。 強塩基フラックス法で作製する単結晶微粒子は一辺が数μm程度の大きな粒子であり、一般的な粒子プロセスで用いられる粒子(数十~数百nm)と異なり溶媒中でブラウン運動をせず容易に分散しないことが明らかになった。そのため、本研究内ではスピンコートを改良した新規プロセスを開発し立方体粒子の整列を実現した。得られた整列膜を用いて粒界や異なる結晶面結合における電気伝導特性の解明に着手した。 その他にも、La4BaCu5O13+dの希土類元素(La)を他の元素で置換した材料を検討し、極低温から高温までの電子物性を詳細に検討した。
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