ナノマテリアルの健康リスク評価手法の開発が国際的に緊喫な課題であることを背景に、我々は以前に、ナノ粒子の細胞内取込み量をフローサイトメーター(FCM)の側方散乱光強度 (Side Scattered Light: SS)を指標に、Live cell のまま、迅速・簡易に評価可能なin vitro の手法を提案した (SS法)。本手法は現在ナノ粒子毒性研究分野において広く利用されている。一方で、SS法は細胞内取込み量を評価できても、実際にナノ粒子を取込んだ細胞における毒性影響を評価することはできない。そこで本研究では、SS法を基盤にナノ粒子取込み量と毒性影響の二要素を同時解析できる手法の開発に取り組んだ。
30種類以上のナノ粒子について、(取込み量)+(細胞毒性)の評価として、PI染色による細胞生存率をSS強度と同時解析した。また、(取込み量)+(遺伝毒性: DNA損傷性)の評価として、高感度DNA損傷マーカであるリン酸化ヒストンH2AX(蛍光免疫染色)とSS強度を同時解析した。
ナノ粒子の細胞内取込み量と細胞毒性または遺伝毒性を同時解析することで、細胞内取込み量とその毒性影響が必ずしも一致しない、すなわち、取込み量が多くても細胞毒性または遺伝毒性が低い粒子、逆に取込み量が少なくても細胞毒性または遺伝毒性が高い粒子があることが判明した。また、細胞毒性と遺伝毒性の関係も必ずしも相関性があるとは限らないことが示唆された。本研究のようにナノ粒子の細胞内取込み量に加えてその毒性情報を同時に提供する手法は優先的にリスク評価を進めるべきナノマテリアルのスクリーニング等に有用であると考えられる。
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