研究課題/領域番号 |
15H06895
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
紺野 由希子 一橋大学, 大学院商学研究科, 特任助教 (50756749)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 上場廃止 / コーポレートガバナンス / 株主集中度 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は,上場廃止前の企業の財務状況,株主といったステークホルダーの状況を調べ,どのような企業が上場廃止を行っているのか明らかにすることである. 平成27年度は,東京証券取引所で上場している企業を実証分析し,どのような企業がどのような理由で非自発的上場廃止と自発的上場廃止を行っているか分析を行った.分析の結果,自発的上場廃止では,これまで提唱されてきた節税効果仮説,富の移転効果仮説,上場維持コスト削減仮説,アンダーバリュー仮説が支持されることとなった.さらに,「実質破綻による上場廃止」企業を除く,「自発的上場廃止」,「流動性に関する非自発的上場廃止」,「信頼性に関する非自発的上場廃止」を行った企業は,株主集中度が高い傾向にあることが分かった. 一方,実質破綻による上場廃止に対しては株主集中度が有意でないため,株主集中度は上場廃止には影響を与えるが,倒産,清算,企業再生などのいわゆる倒産イベントの発生には影響を与えないということが分かった. 株主集中度が高い企業とはオーナー企業,同族企業,あるいは少数の投資グループによる支配されている企業の可能性が高い.このような企業には,上場廃止というリスクがあるということを示すことが出来たことが本研究の貢献である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,自発的上場廃止及び非自発的上場廃止をどのような企業が行っているか,そしてどのような理由で行っているかについて明らかにするために,企業の株価データ,財務データ及びステークホルダーのデータを用いた実証分析を行うことを予定していた. これらに関しては,研究計画・方法で平成27年度に設定した内容をすべて達成することができた.研究成果に関しては,学会発表やワークショップでは公表したが,これから論文としてまとめジャーナルに投稿する予定であることから,総合的に勘案して上記の達成度とした.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,研究計画・方法に従って,引き続き研究を進めていく予定である.具体的には,上場廃止とその理由が,上場廃止後の経営にどのような影響を与えたのか分析を行う予定ある.また,平成27年度に得られた研究成果の中で,上場廃止の要因が業種ごと異なることが読み取れたので,今後は業種の違いについても着目して研究を行っていきたい.その他にも,企業の投資行動や敵対的買収に対する防衛策導入の有無と上場廃止の関係など,様々な観点から分析を行う準備を進めている. 研究成果に関しては,今後も学会やワークショップで積極的な発表を行い,多くの研究者とディスカッションをすることで,より内容をブラッシュアップする.また,成果をジャーナルに投稿する予定である.
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