日本には400万社以上の企業があるが,そのうち上場している企業は,2014年末の時点でわずか約3600社となっている.上場を目標としている中小企業も多いが,上場していた企業が,どうして上場廃止となってしまうかについては,ほとんど研究がなされていない.また,上場廃止には自発的上場廃止と非自発的上場廃止があるが,その要因の違いについてもほとんど研究がなされていない. 本研究では,上場廃止前の企業の財務状況,株主といったステークホルダーの状況を調べ,どのような企業が上場廃止を行っているのか分析を行った.これにより,自発的上場廃止について,企業金融やコーポレートガバナンスの観点から,経営者がどのような理由で自発的上場廃止が行われているのかについて明らかにした.また,非自発的上場廃止を行う企業の特徴を上場廃止前の企業の情報から読み取ることができることを示した. 本研究は,これまで日本では研究されてこなかった上場廃止理由の違いを考慮した上場廃止予測について包括的な実証分析を行うことが独創的である.本研究の意義は,自発的上場廃止について,上場廃止を行う企業の特徴を明らかにすることで,どのようなメカニズムで上場廃止が行われるのか企業金融やコーポレートガバナンスで議論されてきた問題を明らかにすることができる.さらに,経営者はどのような状況で上場廃止の判断を行うべきか示唆を与えることができる.非自発的上場廃止については,上場廃止を行う企業の特徴が分かり,投資家にとって有益な情報となると考えられる.
|