研究課題/領域番号 |
15H06897
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
萩野 浩一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (70762061)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | X線天文学 / ASTRO-H / 活動銀河核 |
研究実績の概要 |
2015年度は、本研究課題の中心であるひとみ(ASTRO-H)衛星に搭載される硬X線撮像検出器(HXI)の打ち上げ前試験および検出器応答モデルの開発を実施し、衛星打ち上げおよび初期運用・データ解析にも携わった。衛星の打ち上げは無事成功し、観測装置も予定していた通りに動作させることができた。打ち上げ前の地上での最終試験結果と応答関数および解析ソフトウェアの開発状況に関しては、私がHXIチームの代表として天文学会にて報告した。また、衛星搭載品の主検出器部については、地上試験結果をまとめて論文として投稿し、まもなく出版予定である。
検出器開発に加えて、ひとみ衛星で期待される高精度な観測データに対応するために不可欠である、現実的な3次元形状や速度分布を仮定したアウトフローのスペクトルモデルの開発も進めている。私は、7 keV付近に非常に鋭いスペクトルの落ち込みが見られることで知られる1H 0707-495のX線観測データに、新たに開発したアウトフローのスペクトルモデルを適用した。この天体のX線スペクトルは、従来はブラックホール周辺の降着円盤からの相対論的な反射成分によって説明されていたが、我々は超高速アウトフローという新しい解釈によって矛盾なく説明できるということを新たに示した。この成果は論文としてまとめて投稿し、現在査読中である。また、国際研究会における招待講演でもこの成果を発表した。さらに、10月末には、メリーランド大学にて上記の研究成果についてセミナーを行った。このセミナーでは、アウトフローやAGNの多くの研究者と交流することができ、今後の研究につながる有意義な議論や意見交換をすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ひとみ衛星の打ち上げは成功し、観測装置も予定どおり立ち上げることができた。また、モンテカルロシミュレーションを用いたスペクトルモデルの構築およびその観測データへの適用は順調に進んでいる。 したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実際の超高速アウトフローの観測データに、モンテカルロシミュレーションによるスペクトルモデルを適用する予定である。
残念ながら、超高速アウトフローの観測以前に、ひとみ衛星がトラブルによって運用終了してしまったため、今後の研究ではひとみ衛星による観測データではなくChandra衛星やXMM-Newton衛星、すざく衛星などのアーカイブデータを用いることで研究を進める。また必要であれば、現在運用中のChandra, XMM-Newtonに観測提案を行う。新しいスペクトルモデルの開発は順調であるため、アウトフローによるエネルギー放出量を求めるという本研究の目的は達成できると見込んでいる。
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