1.「低気圧起因の秋季ブルームが二次生産者に与える影響の評価」について 近年北極海の海氷が減少し、気象場が変化したことで、秋季のチャクチ海では大気・海洋の擾乱が強まるイベントの頻度が多くなっている。このイベント時には海洋下層から上層への栄養塩供給が増し、植物プランクトン群集組成の変化や現存量が増加することが明らかとなった。さらに、植物プランクトンは動物プランクトンにただちに消費されることも捉えられ、北極海の環境変化から連鎖する生態系の変化が一部明らかとなった。本成果について、平成28年度は1件の学会で発表し、また論文としてまとめ国際誌へ投稿・査読中である。
2.「秋季南部チャクチ海生物学的ホットスポットにおける底層低酸素水塊の形成要因の解明」について チャクチ海生物学的ホットスポットと呼ばれ、豊かな海洋生物(特に底生生物)の多様性・生物量を誇る海域の底層には、秋になると低酸素水塊が出現する。これは海洋表層で増殖した植物プランクトン(基礎生産)が海底に沈降し、底生生物や微生物によって消費・分解されて形成すると考えられている。本研究では海底に堆積する有機物量の指標である基礎生産量と秋季の底層酸素濃度の経年変化の間に負の相関を捉えた。つまり年によって大きく変化する基礎生産量によって秋の底層酸素濃度も変化することが明らかになり、環境変化に伴う基礎生産者の応答が、食物網を介して底生生物群集に影響が及ぶことを示唆した。本成果について、平成28年度中に1件の学会で報告し、平成29年度中には論文としてまとめ国際誌に投稿できる見込みである。
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