本研究では近年北極海で観測されている海氷減少や気候変動が海洋生物へ及ぼす影響に注目し,生態系を底辺から支える植物プランクトンとそれをエネルギー源とする動物プランクトンや底生生物の動態について調査した.植物プランクトンは秋季の大気擾乱イベントに連鎖して生じる海洋内部の変化に鋭敏に応答して増殖し,動物プランクトンのエネルギー源となることが明らかとなった.一方で,ホットスポットと呼ばれる北極海の海洋生物が特に豊かな一部海域において,海氷が消失する期間の増加と共に増加する植物プランクトンが,海底へと沈降して底生生物の活動を支えることを明らかにした.
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