研究課題
[1] 平成27年度10月に一週間程度、南海トラフ東部の海底ケーブル(DONET)展開域で活発な浅部低周波地震(VLFE)活動が発生した。DONET記録から検出したVLFEの中には、互いに低周波数帯域の波形がそっくりで、ほぼ同じ場所で発生したと推定されるVLFEのグループが複数存在した。しかし、個々のイベントについて震源を求めると、それらは空間的にバラついてしまう問題に直面した。原因は、VLFE波形に特有の走時測定の難しさから生じるエラー等にあると考えられる。そこでまず、検出された全イベントをクラスタ解析し、波形の特徴から発生位置が近いと推定されるVLFE同士をグループ化した。各グループの代表的な震源位置を求めることにより、推定位置のバラつきを低減した。[2] 上述のクラスタ解析を適用して得られた31グループの震源位置を求めた。その結果、VLFEの震源は南海トラフに沿って北東側と南西側に大きく分かれた。それらはトラフ軸からの距離が異なっており、北東側のグループが南西側のグループよりもトラフ軸から離れた場所にある。[3] 過去の構造探査の結果から、DONETの北東側では海嶺が沈み込んでおり、沈み込むプレート上面に凸状構造が在ることが知られていた。得られた北東側のVLFE分布は、海嶺沈み込みに伴う周辺の間隙水圧とせん断応力の変化により整合的に説明できる。つまり、この領域の応力場や歪み解放様式が、沈み込む海嶺の影響を受け、北東側と南西側で全く異なる可能性を示唆する結果を得た。[4] 北東側グループには、その波形の特徴が極めて浅部で発生したことを示すVLFEが、多数見出された。これらはプレート境界断層から上方へ枝分かれする分岐断層上で発生していると推測される。つまり、北東側では、プレート境界断層よりも、寧ろ分岐断層においてプレート間の歪みが解放され、津波も励起される可能性を示す。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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