おおむね順調に遂行した。 1.Comamonadaceae科に属する微生物の比較ゲノミクスによる好アルカリ性Serpentinomonas属菌特異遺伝子群の抽出 The Cedars蛇紋岩水系から単離されたSerpentinomonas A1、B1、H1株はpH11を至適pHに持つ好アルカリ性微生物である。ゲノム解析の結果、未知の好アルカリ性機構を有していると考えられた。よって、好アルカリ性Serpentinomonasと近縁の好中性菌を比較ゲノミクスすることで、Serpentinomonas属菌の好アルカリ性に関与する遺伝子群を明らかにすることにした。まずSerpentinomonas属菌のゲノム近縁の好中性菌の約半分であることが分かった。また、詳細な遺伝子解析では陽イオンやリン酸の輸送蛋白をコードする遺伝子群において、顕著な違いが見られた。このことは高アルカリ環境に適応するため、特殊な陽イオンの濃度勾配によるエネルギー代謝機構を獲得し、また、エネルギー、リン酸利用を最小化するため、ゲノムを縮小した姿が浮かび上がった。 2.Serpentinomonas属菌の陽イオン勾配に関する生理学的解析 陽イオン濃度勾配を考える上で、まずpHと生育の詳細な理解が必要となる。培養瓶による回分培養ではpHを安定させることが不可能であるため不適切である。よって共同研究者らと連続培養槽を用いて解析した結果、少なくともpH12.5までは非常に良好に生育することが分かった。さらに高いpHでも生育する可能性が高いが、12.5を超えると、連続培養槽内で安定したpHを維持することが困難であった。 今後、この連続培養系を用い、各種カチオンがSerpentinomonasの生育に与える影響を調べ、かつ、1.の課題で抽出された好アルカリ性特異遺伝子群の発現解析を行うことで、この菌の好アルカリ性機構の解明を目指す。
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