研究課題
本研究課題は、2 型糖尿病患者におけるセルフスティグマ低減のための視聴覚教育資材の開発およびその効果検証を目的とする。計画している具体的な研究項目は、3部から構成されており、①質的研究を用いて、2型糖尿病に対するスティグマ耐性のコーピング・スキルを獲得するプロセスについて明らかにした上で、② ①の質的研究により抽出された、コーピング・スキル獲得に必要とされる各要素を取り入れたセルフスティグマ低減のための教育資材を、患者のナラティブ(語り)を用いて開発した後、③臨床への応用が可能かどうか、介入研究を実施し、申請者らが2014年に開発したセルフスティグマ尺度を用いて、同教育資材の効果検証を行うことである。平成27年度は、研究項目の第一部である、2型糖尿病患者が、病気を持っていても、病気を含めた自己価値観をどのように維持しているのか、すなわち、病気に対するスティグマ耐性のコーピング・スキル獲得プロセスについて明らかにすることを目的として、質的研究を実施した。なお、質的研究実施にあたっては、東京大学医学部倫理委員会(倫理審査承認番号10936)および帝京大学医学部倫理委員会(帝倫15-131)にて、承認を得た。調査対象者は、東京大学医学部附属病院および帝京大学医学部附属病院糖尿病代謝内科で外来加療中の2型糖尿病患者、成人男女17名であった。データ収集は、職場や家庭の人間関係で、2型糖尿病に関連した肯定的な経験について自由に語ってもらう、半構造化面接法によるインタビューを実施した。データ分析は、逐語録を作成後、質的記述的研究法によるオープンコーディングと継続比較分析を行った。データ分析には、質的研究を専門とされている萱間真美教授(聖路加国際大学)および心療内科を専門とされている吉内一浩准教授(東京大学)に加わっていただいている。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度に研究計画していた質的研究による個別インタビューを実施し、おおむね順調に進展している。目標症例数20名中17名のデータ収集がすでに完了した。スティグマ耐性の社会的コーピング・スキルを獲得するにいたる経験を、より豊かに言語化する能力を持つ患者のナラティブ(語り)をデータ収集することによって、セルフスティグマ低減を目的とした、より効果的な教育資材の開発へとつなげる計画である。そのため、引き続き個別インタビューの実施により、データ収集の継続およびデータ分析を並行して実施している。
より説得力のある患者のナラティブ(語り)を素材として用いることによって、セルフスティグマ低減のためのより効果的な教育資材を開発するため、質的研究による個別インタビューの実施により、患者のナラティブ(語り)について引き続きデータ収集する。その後、臨床への応用が可能かどうか、介入研究を実施し、申請者らが2014年に開発したセルフスティグマ尺度を用いて、研究計画通り、同教育資材の効果検証を行う。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
BMJ Open Diabetes Research and Care
巻: 4 ページ: e000156
10.1136/bmjdrc-2015-000156
Patient Education and Counseling
巻: in press ページ: in press
http://dx.doi.org/10.1016/j.pec.2016.02.002