研究課題/領域番号 |
15H06916
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山口 真平 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (40761002)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | バイオマス / ダウンドラフト固定床型ガス化炉 / 固体酸化物形燃料電池(SOFC) / シミュレーション / タール |
研究実績の概要 |
本研究では、タール発生を抑制できるダウンドラフト固定床型ガス化炉とSOFCから成る小型の複合発電プラントを開発し、プロセス全体の運転データを解析することにより、高効率で安定な装置の設計や運転指針を確立することを目指している。 平成27年度は、バイオマス発電プロセス中の(1)ダウンドラフト固定床型ガス化炉と(2)SOFC発電のパートごとに試験と解析を実施した。各試験で得られた実測値とシミュレーション結果の比較により、ダウンドラフト固定床型ガス化炉の生成ガス組成・発生量・発熱量とSOFCの発電特性を予測するモデルの妥当性を確認できた。 (1)バイオマスのガス化に関して、ダウンドラフト固定型ガス化炉の運転条件(原料の供給量、原料組成、ガス化剤流量およびガス化炉温度)を変えたときの生成ガス組成をガスクロマトグラフにより調べた。ガス化のシミュレーションは、各運転条件において熱力学的に平衡状態のガス組成を探索する独自のプログラムにより計算した。各条件における実験とシミュレーションの結果を比較することにより、妥当性のあるガス化シミュレーターを開発することができた。シミュレーションの結果からダウンドラフト固定床型ガス化炉内部の温度帯の中でも、部分燃焼部と還元部の約650℃以上の高温度帯が生成ガス組成に寄与することを明らかにできた。 (2)SOFC発電では、SOFC標準セルの発電特性を評価する発電特性測定装置を作製した。種々の温度条件下で、空気と単体の燃料ガス(水素、メタン、一酸化炭素)を使用したときの発電特性を測定した。SOFCの発電特性は、平衡論(ネルンスト式)及び速度論(バトラーフォルマー、ターフェル式)に基づきモデル化した。水素を使用したときの、各温度における発電特性の実測値と計算値の比較から、平衡論と速度論モデルによりSOFCの発電特性を推算できることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、(1)ガス化工程の運転条件と生成ガスの関係の解明(2)SOFCの発電特性評価装置の作製と、標準ガス(H2、CO、CH4)による発電特性の測定と解析(3)フィルターによる不純物の分離性検討を予定していた。 (1)ダウンドラフト固定床型ガス化炉は、外部熱源を使用したタイプと自燃式のタイプのもの装置による実測データ取得と熱力学的な数値解析を行い、構築したモデルの妥当性を確認した。 (2)SOFCの装置に関しては、標準ガス(H2、CO、CH4)を使用して発電特性を測定及び解析を行い、水素を用いた発電特性を測定することにより、温度に対するSOFCの発電特性を予測できることを確認した。 (3)不純物の分離性に関しては、セラミックフィルターにより、ガス化時に発生する煤を除去できることを確認した。ガス化で発生するタールは低温の条件でより多く発生する傾向があり、メタンの濃度とタールの量に相関関係があると判明しつつある。メタンを低減する条件で運転することによりタールの少ないガスが得られる傾向も予測できた。 以上の点から、本研究は概ね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は下記に示すように、実験と解析を並行して実施する予定である。 1. 実験パート (1)ガス化、精製、発電による連続プラント作製を行う。具体的には、ダウンドラフト固定床型ガス化炉、バグフィルターによるガス精製装置、SOFCによるバイオマス発電プラントを作製する。連続装置を作製するにあたり、ガス化工程では、スチームエジェクターにより蒸気をガス化剤(空気)へ添加するラインや再循環するラインを設ける。(2)ガス化、精製、発電による連続運転によるデータを取得する。具体的には、ガス化、精製、発電工程における運転条件(バイオマス原料の投入量、ガス化温度、ガス化剤供給量、ガスリサイクル量、SOFCの操作温度、ガスフィード量など)を変更した際の、生成ガス組成・流量、SOFCの発電特性などのデータを取得する。 2. 解析パート (1)ダウンドラフト固定床型ガス化炉のシミュレーションを行う。具体的には、バイオマス原料(組成、水分)や運転条件(温度、ガス化剤量、水蒸気量など)と生成ガスとの関係をシミュレートする。モデルは、熱力学的な平衡論に基づき構築し、計算する。シミュレーションの結果は実測データとの比較検討を行いながらモデルを改良する。(2)SOFCのシミュレーションを行う。具体的には、原料ガス組成や温度などの運転条件とSOFCの発電特性の関係をシミュレートする。モデル化には、平衡論と速度論からなる電気化学モデルを考える。シミュレーションの結果は実測データとの比較検討を行いながらモデルを改良する。(3)ガス化発電プロセス全体のシミュレーションを行う。具体的には、実測データに基づくダウンドラフト固定床型ガス化炉とSOFCのモデルを組み合わせることにより、プロセス全体の熱効率などを総合的に検討し、高性能・安定なバイオマス発電システムの構築に資する設計・運転指針を確立する。
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