研究実績の概要 |
本研究では、ダウンドラフト型ガス化炉と固体酸化物形燃料電池(SOFC)から成る小型で高効率なバイオマスガス化発電システムの確立を目的とした。 ダウンドラフト型ガス化炉の設計・制御指針確立のため、熱力学平衡論に基づき、ガス化ガスの組成を予測するシミュレーションモデルを構築した。シミュレーションにより、操作条件(原料供給量・C, H, O元素組成、含水率、空気供給量、水蒸気供給量、温度、圧力)から平衡状態のガス化ガスの組成を予測することができた。 シミュレーションモデルの妥当性評価には、小型炉(ガス出力が約0.1kWで外部熱源利用)、と2種類の大型炉(ガス出力が約20kWと50kW、部分燃焼の熱源利用)から成る3種類のダウンドラフト型ガス化炉による実測組成と計算組成を比較した。比較結果から、小型炉では平均濃度差は3%以内、大型炉では1.5%以内の精度で、ダウンドラフト型ガス化炉のガス化ガス組成を予測することができた。 大型炉では、バイオマスの部分燃焼により内部温度は約200℃から1100℃の間で不均一に分布している。本課題の独自性として、大型のガス化炉内部の温度帯のなかでも、550℃以上の熱分解・部分燃焼・還元部分の温度帯の平均温度(約800℃)を計算条件に与えることにより、大型炉においても精度よくガス化ガス組成をシミュレートできることが判明した。 また、SOFCと小型ラボ機から成るガス化発電の連続評価装置を作製した。木材由来のガス化ガス発電による最大出力は、純水素を使用した時の最大出力の約40~80%を得ることができた。水素の最大出力の40%に制御した場合であれば、自燃式の大型炉においても、自立して発電可能であることが予測された。また、走査型電子顕微鏡により観察した結果から、ガス化発電試験に利用後のSOFCのセルの燃料極表面は、炭素析出による電極の被毒は確認されなかった。
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