本研究では、地域医療連携体制が医療資源の効率的利用に貢献しているかどうかを評価するために、福岡県後期高齢者医療広域連合の医科・DPCレセプトデータを用いて、脳卒中・大腿骨頸部骨折における地域連携診療計画策定の有無がケアプロセス全体にわたる医療費・診療日数に与える影響を明らかにすることを目的とした。平成28年度は福岡県後期高齢者医療広域連合の平成22-27年度医科・DPCレセプトデータを用いて、脳出血/大腿骨頸部骨折入院患者を追跡し、地域連携診療計画を伴い、他病院へ転院している群を転院群、同一病院内の回復期病棟へ転棟している者を転棟群、残りをその他の群に分類し、脳出血/大腿骨頸部骨折における医療連携体制と医療資源利用についての解析を行った。 平成27年度に実施した脳梗塞についての解析と同様に、以下のような結果が得られた。 (1)その他に群に比べ、連携群、転棟群ともに急性期・周術期在院日数の有意な短縮が認められた。 (2)転棟群では回復期、全体の診療日数は有意に短く、医療費は有意に低かったが、連携群では関連していなかった。 これらの結果から、より効率性の高い連携診療計画に対して診療報酬上のインセンティブを付与することが、治療プロセス全体における効率性を高めるために必要であると考えられた。また、今後は介護保険データと突合する研究を行う必要性があると考えられた。 脳梗塞・脳出血に関する成果について、英文学術雑誌に投稿し、受理された。また、大腿骨頸部骨折の周術期治療・医療連携体制についての英語論文を2編作成し、投稿した。
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