研究課題/領域番号 |
15J00013
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金井 雅仁 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 感情制御 / 認知的再評価 / 文化的自己観 / 相互協調性 / ネガティブ感情 |
研究実績の概要 |
研究1では,質問紙調査により,文化的自己観(相互独立性・相互協調性),感情制御方略(抑制・認知的再評価)の使用傾向,普段の感情状態の関係性を調べ,感情制御方略の使用傾向と普段の感情状態との関係性が,文化的自己観の個人差によって調整されるかを検討した。分析の結果,認知的再評価の使用傾向と普段ネガティブ感情を経験する傾向との関係性が,相互協調性の個人差によって調整されることが示された。その調整効果は,相互協調性が高く,かつ普段の生活において認知的再評価を行う頻度が少ない個人はネガティブ感情の経験頻度が高いというものだった。これは,相互協調性が高い個人のうち,認知的再評価を日ごろあまり行わない個人は,自身の感情を適切に制御できていない可能性を示唆していると考えられた。 続いて,研究2では,実験室で喚起させたネガティブ感情を,認知的再評価,腹式呼吸法,気逸らしによって制御させた際に,各方略の不快感情制御効果が文化的自己観と関連するかを検討した。現在,階層線形モデルを用いた詳細な分析を実施しているところであるが,変数間の相関係数からは,相互協調性が高い個人において,認知的再評価の不快感情制御効果が低い傾向が示されている。これは,相互協調性が高い個人は,認知的再評価による感情制御を試みても,適切な制御として機能しづらい可能性を示唆していると考えられた。 以上の検討から,認知的再評価という方略による感情制御における相互協調性の役割の一部が明らかになった。 さらに,予備実験では,今年度実施を予定している,プライミング手続きにより文化的自己観を操作する実験に向けて,用いるプライミング手続きを選定するため,代表的なプライミング手続きの効果・特徴を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時,年次計画として採用1年目に2つの研究の実施を予定していた。その結果,平成27年度は,研究1(感情制御方略の使用傾向と普段の感情状態との関連における文化的自己観の調整効果の検討)を遂行し,結果をまとめて学術誌に投稿する論文を現在執筆中である。 研究2(感情制御方略の効果と文化的自己観との関連の検討)は,データ収集が終了し,現在,階層線形モデルを利用した方法により,データを解析中である。 以上の点を踏まえると,行った研究の論文化には至っていないものの,計画通りに研究は進捗しており,遂行状況はおおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
採用2年目は,年次計画通りに研究を遂行する予定である。 まず,研究3では,実験に文化的自己観を一時的に操作するためのプライミング手続きを導入し,実験的に相互協調性を高くすると内受容感覚が鈍感になるか,感情認識が不明瞭になるかを検討する。これにより,文化的自己観と不明瞭な身体感覚認識・感情認識との間の因果関係が明らかになることが期待される。 次に研究4では,同様のプライミング手続きを導入し,実験的に相互協調性を高くすると認知的再評価による感情制御の効果が低下するかを検討する。これにより,文化的自己観と感情制御方略の効果との間の因果関係が明らかになることが期待される。 また,申請時に提出した研究計画(研究3, 4)に加え,相互協調性が高い個人に高い効果を発揮する感情制御方略がどのようなものであるかを明らかにするための研究を構想中である。
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