研究実績の概要 |
アルケンのC-H結合と芳香族化合物のC-H結合のクロスカップリングは官能基化をすることなくジアリールエチレン類を合成する反応環境的にも経済的にも望まれている。主に脱水素型のHeck反応が発展しており、様々な反応が報告されている。しかしHeck反応は一般に高価で有毒な遷移金属触媒を用いる必要があり、触媒を用いない反応の開発が望まれる。さらに、得られる生成物は主に1,2-ジアリールエチレンとなり、1,1-ジアリールエチレンの合成は限られた基質でしかできなかった。1,1-ジアリールエチレンは医薬品などによく見られる構造であり、より汎用性の高い反応の開発が求められる。 我々は以前にβ-ヨードアルコキシスルホニウムイオン用いた反応について報告している。この反応はアルケンをケトン、アルコール、エポキシドといった種々の酸素官能基を持つ化合物へと変換することができるが、スルホキシド由来の酸素官能基が導入される変換にしか適用できなかった。そこで今回はβ-ヨードアルコキシスルホニウムイオンを中間体とするアルケンのC-H結合と芳香族C-H結合のクロスカップリング反応を検討した。 支持塩の塩化メチレン溶液中でジフェニルスルホキシドの存在下、ヨウ素を電解酸化し、ヨウ素のカチオンを蓄積、ブロモスチレンを加えβ-ヨードアルコキシスルホニウムイオンを発生させた。ここへ芳香族求核剤を加えるとヨードジアリールエタンが生成し、さらにDBUで処理すると目的とするジアリールエチレンが得られた。 本反応は臭素、エステルなどの置換基を持つスチレン誘導体を用いることができ、またインデンを用いた場合も目的物が得られた。β-ヨードアルコキシスルホニウムイオンはベンゾフラン、アニソール、ジメトキシベンゼンといった芳香族求核剤とのカップリングに適用できた。
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