研究実績の概要 |
平成27年度の研究活動では、日本学術振興会に提出済みの研究計画に沿って、英語母語話者・第二言語習得者の音韻修復(崩れた音声を脳が修復して聞く能力)について研究を行った。具体的には、(1)音声の一部を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(音素レベル)と、(2)音声の全体を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(単語レベル)を行った。 音声の一部を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(音素レベル)では、英単語内の一音素(/m/, /n/, /l/, /r/)を削除し、そこに雑音を挿入した。音声の全体を崩し、その崩れた音声を修復して聞く能力を見る実験(単語レベル)では、英単語の音声全体を一定の短い時間区間に切り分けて、その一つ一つを時間軸方向に反転させ、再度連結させた「時間反転音声」を作成した。 実験の結果、母語話者も第二言語習得者も、崩れた音声を知覚上で修復して聞いていることがわかった。例えば、音声の一部を削除して雑音を挿入した場合は、削除された音声が、知覚上で修復され、はっきりと聴取された。また、「削除された鼻音(/m/, /n/)」は、「削除された流音(/l/, /r/)」よりも、はっきりと知覚された。更に、音声全体を一定の時間区間に切り分けて、その一つ一つを反転し、連結させた場合も、その一つ一つの時間反転区間が短いと、音声の明瞭度が保たれた。ただし、母語話者と第二言語習得者の音韻修復力には大きな差があり、言語習熟度が高いほど、崩れた音声が修復されやすいと考えられる。 翻って、英語教育の観点から音韻修復を考えると、英語の語彙や表現を、「音声と共に」学ぶ重要性が示唆される。多様な英語の発音を公共放送で聞くなど、音韻修復の練習をする大切さも示唆される。
|