研究課題
覚せい剤の長期使用による精神・神経障害及びうつ症状などの退薬症状には、根本的な治療方法が無く、詳細なメカニズムも解明していない。一方、Brain-derived neurotrophic factor(BDNF)とその受容体Tropomyosin-related kinase B (TrkB)が、うつ病などの精神疾患の病態だけでなく、治療メカニズムに関わっている可能性が指摘されている。従って、本研究では、覚せい剤の繰り返す投与に誘発した逆耐性及びうつ症状に対するマウス各脳部位におけるBDNF-TrkBシグナルの役割を調べた。その結果については、まずメタフェタミン(3mg/kg)を5日間繰り返す投与による、うつ症状を引き起こすことが分かった。また、このうつ症状が長時間を続くことも分かった。さらに、覚せい剤を繰り返す投与したマウス脳の側坐核のBDNF発現量が正常のマウスより増加し、海馬と前頭皮質では変化がないことを見られた。次に、覚せい剤の繰り返す投与によってうつ症状、逆耐性また側坐核シェルにおけるスパイン密度の変化を引き起こす、TrkBのアンターゴニストであるANA-12の連続投与では、これらの症状を改善することが分かった。また、In vivo microdialysis解析によって、ANA-12では、覚せい剤の繰り返す投与によるマウス側坐核シェルにおけるドパミンリリースの増加を改善することも見られた。さらに、マウス脳の側坐核シェルに直接ANA-12を投与するより、覚せい剤の繰り返す投与によるうつ症状と逆耐性を有意に改善することが分かった。これらの結果による、覚せい剤の繰り返す投与による退薬症状では、側坐核シェルにおけるBDNF-TrkBシグナルの増進が重要の役割であることが分かった。また、TrkBのアンターゴニストでは覚せい剤の長期使用による退薬症状に対する治療薬の可能性も示唆された。
2: おおむね順調に進展している
覚せい剤の長期使用による退薬症状におけるBDNF-TrkBシグナルの役割に関する研究成果は、学会発表を行い、論文も発表されております。このように、本研究はおおむね順調に進展している。
現在、iTRAQ解析により、覚せい剤を繰り返す投与したマウスの脳における新たな分子ターゲットを確認しております。今後の研究では、遺伝子改変動物を用い、新規分子メカニズムの詳細を調べ、新規治療法の開発に結び付けていく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
East Asian Arch. Psychiatry
巻: in press ページ: in press
Translational Psychiatry
巻: 5 ページ: e666
10.1038/tp.2015.157
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/shakai/jp/index.html