社会相互作用の基盤となるメカニズムを探るため、「表情模倣」に着目し、研究を進めている。昨年度は、他者の表情観察時の乳児の表情筋活動を計測することで表情模倣の初期発達について調べ、遅くとも5か月齢までに表情模倣反応が見られることが明らかになった。本結果は、今年度12月にRoyal Society Proceedings B誌にて掲載・発表された。 今年度は、表情模倣が高次の社会認知機能の発達にどのように関与しているのかという疑問に着目した。視覚的な視点取得(他者が見ているものは自分が見ているものとは異なることへの理解)が出来るようになると言われている18~24ヶ月齢に焦点をあて、表情模倣の反応性と、他者視点に基づいた行為の意図理解についてそれぞれ調べ、それらの関連性を分析した。表情模倣については、昨年度と同様に、女性が笑っている映像(laugh)や泣いている映像(cry)を見ている際の幼児の表情筋(口角を引き上げる頬部の筋肉〈laughに対応〉と、眉をしかめる眉上部の筋肉〈cryに対応〉)の活動を表面筋電図によって計測した。視点取得に関しては、女性がおもちゃにむかって手を伸ばすような映像を作成し、それを見ている際の幼児の視線を計測することで、他者視点に基づいて相手の行為を予測できているかどうかを判断した。それらを合わせて分析した結果、相手の視点に基づいた行為予測の成績がよい幼児群では、同成績が悪い幼児群に比べ、他者の表情に対して模倣反応を示しやすいことがわかった。これらの結果から、表情模倣は視点取得や意図理解などの社会認知機能の発達と正の相関性をもつことが示された。
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