身体を構成する臓器は正常体性幹細胞により恒常性が保たれる。幹細胞は自己複製能と多分化能を有する(Cell 2008)。癌組織中にも癌幹細胞があり、転移を含む腫瘍の悪性化、治療抵抗性などに重要であると示されつつあるが、消化管の炎症性発癌における幹細胞の役割が不明であり、適切な治療標的が定まっていない。 胃は多彩な細胞で構成され、胃癌には進行の遅いintestinal typeと悪性度の高いdiffuse typeの2種があり、発生母地も遠位部(前庭部)と近位部(体部)と、2種に分かれる。胃前庭部のLgr5陽性細胞、CCk2R陽性細胞が癌幹細胞となる可能性が示唆されるが(Cell Stem Cell 2010、GUT 2015)、正確な起源となる幹細胞や相互関係は不明である。胃癌の起源となる幹細胞を同定し、その機能を明らかにし、治療標的とする着想に至った。 上記の研究の遂行のために、米国コロンビア大学のTimothy Wang研究室に留学し実験を開始、Mist1が胃体部の胃癌の幹細胞マーカーとなることを示した論文(Hayakawa et al. Cancer Cell 2015)の共著者となった。
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