研究課題
当該年度には,マウレル裂構成因子の一つPfSBP1に着目し,FLAGエピトープタグを付加したPfSBP1を発現する原虫を用いて,感染赤血球内においてPfSBP1と相互作用する因子の網羅的同定を行った.共免疫沈降法,並びにショットガンプロテオミクス技術を用いて,PfSBP1と相互作用する256因子(205個の原虫因子,51個の宿主因子)の同定に成功した.続いて,同定された原虫因子に対して,Cytoscapeを用いたバイオインフォマティクス解析を行い,STEVOR,PfMAHRP1,PfMAHRP2,PfREX1,PfREX2等といった既知の原虫由来輸送タンパク質とともに,マウレル裂を経由して感染赤血球表面に提示される原虫抗原PfEMP1,PfPIESP2等が,同定されたタンパク質リストには有意に多く含まれていることを明らかにした.これらの結果を実験的に確認するため,小麦胚芽無細胞タンパク質翻訳系を用いて,STEVOR,PfMAHRP1,PfMAHRP2,PfREX1,PfREX2,PfPIESP2タンパク質を合成し,これらを抗原としてマウスに免疫し,各種タンパク質に対する特異的抗体を作出した.これらの抗体を用いて,ウェスタンブロット,並びに免疫抗体染色を行い,PfSBP1との物理的な結合,並びに感染赤血球内におけるPfSBP1と当該因子との共局在を確認した.これらの結果から,同定した因子群には,マウレル裂構成に関与する新規原虫由来輸送タンパク質が含まれている可能性が強く示唆された.これらの結果を踏まえて,同定した原虫因子の中から,質量分析スコアの高い15遺伝子,及び赤内期のリングステージに発現上昇が見られる12遺伝子,計27遺伝子に着目し,これらを欠損したノックアウト原虫の作出を試みた.
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果は,PfEMP1の赤血球表面への輸送に関与するタンパク質の網羅的同定,及びその機能解明において新規の知見を提供するものである.当初の予定である,同定した因子の遺伝子欠損変異体の作出が一部終了した点を鑑みて,概ね順調に進展していると判断した.
今後は,これらの原虫を感染させた赤血球と,血管内皮細胞レセプターCD36との結合親和性を解析し,マラリア重症化に関与する因子の選別を行う.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Parasitology International
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