研究課題
本年度(平成28年度)には,同定した機能未知の原虫由来タンパク質14種について,これをコードする遺伝子欠損変異体の作製,ならびに,その確認のための抗体作出を行った.8種類の遺伝子欠損変異体が得られ,そのうち7種類については,ウェスタンブロットによりタンパク質レベルでの欠損が確認できた.1種類が抗体の非特異的結合により,その欠損が確認できなかった.これらの遺伝子欠損変異体を赤血球へと感染させ,血管内皮細胞レセプターCD36に対する結合親和性試験を行ったところ,野生株を含めた全ての株において,CD36への結合性が低下していることが判明した.この原因を探るべく,電子顕微鏡による感染赤血球表面,及び内部構造を解析したところ,いずれの株においても,マウレル裂構造の破綻,ならびにノブ構造の欠落が確認された.全ての株のgenomic DNAを用いたPCR解析により,いずれの株においても,長期培養によるゲノムテロメア領域の欠損が確認され,CD36への結合性に必須なKAHRPやPTP1等の遺伝子が欠落していることが見出された.これらの事実から,再度,ゼラチン分離したゲノムテロメア領域を保持する野生株を用いての,遺伝子欠損変異体の再作出の必要性が生じた.
3: やや遅れている
熱帯熱マラリア原虫培養に関する研究室ノウハウが足りなかったため,作出した遺伝子欠損変異体のいずれにおいても,ゲノムテロメア領域の欠損が起きていることが判明した.この理由から,ゲノムテロメア領域が欠損していない野生株を用いた遺伝子欠損変異体の作出を行う必要性が生じたため,当初の予定と比べてやや遅れていると判断した.
遺伝子欠損の確認のための抗体は既に1種類を除いて作出できているため,野生株感染赤血球をゼラチン分離することで,ノブ構造・マウレル裂構造を保持する野生株を濃縮し,これを用いて,再度,遺伝子欠損変異体の作出を行う.
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Parasitology International
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Parasites & Vectors
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