研究課題/領域番号 |
15J00156
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朱 陽 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 階層的多孔構造 / モノリス / 金属リン酸塩 / 触媒性能 / 熱膨張率 |
研究実績の概要 |
相分離を伴うゾルーゲル法を用いて、ポリマーの添加や溶媒組成の変化により、マクロ孔とメソ孔制御可能な階層的多孔構造をもつリン酸塩モノリス材料作製手法を確立した。特に、これまでにない組成(リン酸ジルコニウム、NaSICON型金属リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズ、リン酸バナジウム、リン酸コバルトなど)の多孔体の作製に成功した。 得られたそれぞれの組成をもつリン酸塩多孔体の応用研究について、以下のような成果が得られた。まず、階層的多孔構造をもつリン酸ジルコニウムモノリスの炭水化物脱水反応に対する触媒性能を評価した。キシロースからフルフラールへの選択率やフルフラールの生成速度は文献値より優れた結果が得られた。次に、30種類以上の組成をもつ多結晶性NaSICON型リン酸ジルコニウム多孔体が得られた。SrZr2(PO4)3多孔体を代表例として、マクロ孔およびナノレベルの細孔が多孔性セラミックスの熱膨張性に及ぼす影響を調べた。続いて、非晶質のリン酸チタンモノリス多孔体はエチレングリコール中の溶媒熱処理により結晶化することが初めて発見し、結晶化機構を検討した。また、得られた階層的多孔構造をもつリン酸バナジウムモノリスは炭化水素の酸化触媒性能を評価した。シクロヘキサンの酸化反応に優れた触媒性能を示した。最後に、アメリカのRutgers大学のTewodros Asefa先生との共同研究として、得られた階層的多孔構造をもつリン酸コバルトモノリスは電気化学触媒として、水の電気化学分解反応への触媒性能を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一年目の具体的な計画は以下のように立てた。 1.階層的多孔構造をもつ金属リン酸塩多孔材料の合成は二年以内に行う。 2.モノリス多孔体の組成や構造の解析と相分離機構の解明 一年目の研究成果に、リン酸塩系多孔体の作製手法は確率した。具体的に、リン酸ジルコニウム、NaSICON型金属リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズ、リン酸バナジウム、リン酸コバルトなどの階層的多孔構造をもつモノリスの作製に成功した。また、得られたリン酸塩系多孔体について、CHN元素分析、XRD、EDX、NMR、XPSにより組成を分析し、SEM、TEM、窒素ガス吸着測定により細孔構造を解析した。また、ポリマーを相分離剤として使う場合、TG-DTA、FT-IR、Ramanにより相分離機構を解明した。これらの結果により、計画1と2は達成した。特に、得られたリン酸チタンがエチレングリコール中の結晶化挙動は予期外の発見であった。また、フランス国立科学研究センターのDr. Nicolas BrunおよびDr. Anne Galarneauの協力を得ながら、安価な炭水化物としてキシロースから工業的広く使われるフルフラールへを生成する反応をモデル反応として、得られたリン酸ジルコニウム多孔体の触媒性能を評価した。二年目の計画の一部として、モノリス多孔体の炭水化物脱水反応に対する触媒性能評価は計画より早く完成した。以上の結果により、研究課題は当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、本研究課題の二年目研究方針は一年目で得られた結果の上、リン酸塩モノリス多孔材料の触媒性能評価と流通式反応装置の構築とその実用化への展開である。 具体的に、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズなどの多孔体を酸触媒として、炭水化物脱水反応に利用する以外、リン酸バナジウムを酸化触媒として、炭化水素の酸化反応に、リン酸コバルトを電気化学触媒として、水の電気化学分解反応に利用する触媒性能を評価し、反応条件を変化させ、高い触媒性能を与える最適の反応条件を探す。 次に、モノリスの一体化特徴を利用して、簡易流通式反応装置を構築し、目的生成物を大量連続的に生成する可能性を評価する。
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